お腹一杯になります。
交互に語られる現実世界とシナリオの世界は、スマートさと猥雑さが表裏となって、現実世界がシナリオ世界に歩調をあわせるように読み進むにつれて、諧謔の度合いを増してゆく。
う~ん、ウマすぎる。ほとんどノンフィクションだという叔母との恋の逃避行が、驚くやら羨ましいやら。
シナリオ世界のおもしろさも格別で、毎回趣向の違う話がかなり魅力的に描かれる。
良質の短編を、大盤振る舞いって感じで、ほんとご馳走様なのだ。それぞれラジオドラマ用に描かれたものだから、毎回先行きが気になる一番いいところで終わってるのが、またいい。登場人物たちも個性的でひとクセもふたクセもある人ばかり。豊穣といっていい小説の醍醐味が味わえます。おすすめですね。
ラテン文学独特のマジックリアリズムは影をひそめているかわりに、洗練されたスマートさがとても読みやすい傑作です。