前回の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」は、ほんと久々に驚かされたミステリだったが、あれの続編ていったいどうなるの?と思っていたら、倒叙集となってかえってまいりました。
ミステリ好きならおなじみの倒叙。犯人と犯行は最初からわかっていて、どうやってその犯行を見破るのか?というのが倒叙でありまして、刑事コロンボや古畑任三郎が有名だよね。
倒叙のおもしろいところは、犯人との駆け引きがダイレクトにみれるところにある。読んでいる読者はもちろんのこと、探偵もおおかたはじめの方から犯人が誰かがわかっている。どうやって犯人の犯行やアリバイを崩すのかというところに争点はしぼられる。だから、犯人が自信満々で余裕ぶっこいていればいるほど、それが崩れさったときのカタルシスがたまらないのである。本書には、「雲上の晴れ間」、「泡沫の審判」、「信用ならない目撃者」の三編が収録されているのだが、もっとも紙数がさかれている三編目が一番おもしろかった。元刑事であり、捜査のノウハウを知りつくした男が殺人を犯すのである。だから、何が証拠となるのかすべてわかった上で偽装工作するのである。さて、翡翠はこの手強い犯人を相手にその罪を暴くことができるのか?この三編目は、読者に対して大胆なトリックが仕掛けられていておもしろい。まさしく『反転』だ。映像化不可というわけで、小説メディアでのみすっかり騙される作りとなっている。
さて、ここらでもうそろそろ城塚翡翠のバックグラウンドが明かされてもいいんじゃないかと思うのだが、どうだろう?このまま三冊目いってみたいと思います。