読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

宮澤伊織「裏世界ピクニック4  裏世界夜行」

 

 

裏世界ピクニック4 裏世界夜行 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 前の巻を読んでから少し間があいたので、最初どんな設定だったかうろ覚え状態だったんだけど、すぐに回復。そうそう、女子が三人いて、前回のラストでカルト教団とやりあって、と色々思い出して即没入。

 今回も空魚と鳥子は、危なっかしく裏世界を探検しております。それにしても、ネットロアのネタってのは尽きないもんだよね。めずらしく『件(くだん)』や『牛女』なんて妖怪ソースの題材なんかも出てきたけど、総じてこの裏世界関係は、ヤバいくらい怖い。どういったらいいんだろう?ここに登場する怪異は人を怖がらせようという作為の上に成り立っているもので、だからこそ巧みに恐怖を構築しており、いわば万人に届く恐怖となっている。それは演出された恐怖、お化け屋敷の恐怖、人の手になる作り出された恐怖なのだ。血まみれの学生服が何着も、釘で壁に打ち付けられた部屋。ドアを開ける前は確かに話し声が聞こえていたのに、開けたらぴたっと静かになったマネキンだらけの部屋。背の高い赤い人。

 
 演出された恐怖は、想像が容易くストレートに伝わってくる。だから、ここでは因縁や原因のような理由があまり重要ではない。にしてもだ、これがクセになる。ネットロアの奥深さを堪能してしまうのだ。空魚と鳥子がのぞく世界は新たな発見に満ちて、恐怖と同時に好奇心も刺激されて興味が尽きない。

 そして、今回は今まで続いていた閏間冴月問題は鳴りをひそめ、空魚と鳥子の関係に進展がうまれる。いや、進展て、そんな大したことではないのだが、あやしい仲が盛り上がってゆく。少しづつね。

 さて問題は次巻だ。息抜き的な展開でメインストーリーが停滞した本書を受けて、どんな世界が広がってゆくのか?ホント興味尽きないよね。