読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

荒俣 宏「レックス・ムンディ」

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 かつて、これほど神を冒涜した物語があったでしょうか。

 本書は、日本だからこそ受け入れられる物語だとおもいます。

 「総門谷」を読んだ時と同じ興奮をあじわいました。

 南フランスの寒村レンヌ・ル・シャトーは、昔から聖書にゆかりのある土地でした。事実この地にはマグダラのマリア教会があり、キリストが助けた罪深い謎の女マグダラのマリアは、この地の出身だといわれています。1891年、この教会にソーニエールという年若い神父が赴任してきます。赴任してきて間もなく、彼は改修中の聖堂で暗号の書かれた古い羊皮紙を発見します。暗号の謎を解いたこの年若い神父は、一夜にして億万長者になってしまいます。

 驚くことに、これは実話です。

 さて、荒俣氏はここから驚くべき話をくり広げていきます。

 ニコラ・プッサンアルカディアの牧童 」に隠されたメッセージ、世界にあるレイ・ライン、キリスト教史に秘められた謎。

 あの「ダ・ヴィンチ・コード」に引けをとらない、おもしろさです。次々明かされる新事実に、思わず腰を浮かしてしまうほど驚いてしまうこと請け合いです。

 考古学というものは、これほどまでに人を魅了するものなのでしょうか。

 古い伝承や伝説しかり、世界各地に散ばる遺跡や数々の史書、聖画などに秘められた謎。

 常識を覆される快感がたまらない。

 本書では、それがキリストの遺体に関わってくるので、オカルトとしてのおもしろさも加わってきます。荒俣氏お得意の風水も要所で薬を効かせてあるし、なにより本書の壮大なテーマである『レックス・ムンディ』が素晴らしい。

 この、神であり悪魔でもある「世界の王」のイメージはキリストの遺体とあわさって、まことに不気味な影をおとしています。

 まだまだ知らないことが多すぎると実感しました。

 今年流行が懸念されている鳥インフルエンザのことを知って、本書のことを思い出しました。

 荒俣氏は何年も前に、このことを予言していたのかもしれません。

 異端カタリ派テンプル騎士団、黒いマリア、キリストの聖骸布

 これらの言葉に少しでも興味のある方は、本書をお読みください。