アメリカに実在したというペンシルヴァニアの小さな町セントラリア。
1962年以来二十年以上続いているという鉱脈火事で、今現在は廃町になっているだろうといわれているこの町が本書の舞台です。
とにかく、本書に登場する人たちは鉱脈火事がそうさせるのか並べてみなケタはずれにエキセントリック。恋人を昔の親友に寝取られたがゆえに自分を再発見するため、一度限りのスカイダイビングを試みるエディス。本来の自分を表現するため髪を剃り上げ余暇にパントマイムに興じるヌーディストのジュディス。そのジュディスに触発され情炎を燃やす銀行家のデント。周りからはロバ並みに愚鈍に見られるが、ほんとは頭のなかの思考を伝えるには七台のテープレコーダーが必要だと考えているドウェイン。誕生日のプレゼントにはポニーが欲しいと思っていたのに、窓から血まみれのウサギが飛び込んでくるというアクシデントに見舞われる少々ヒステリックな少女フィービー。その他、金物屋だけを狙うロバを連れた泥棒や、ガムとビールだけで生きている別荘管理人なんてのも登場して物語は雪だるま式に大きくなって、読者はあれよあれよという間に渦中に引き込まれてしまう。
おもしろい。まったくもっておもしろい。絡み合う人物相関が巧みにさばかれ、またそれが作者の真摯な目によって温かく描かれていて好感がもてる。是非続刊の「星座は踊る」も読んでみたい。
でもひとつ疑問が残るのは、どうしてこの作者はビートルズのメンバー全員を殺してしまったんだろう?これだけは謎ですね。