読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョージ・R・R・マーティン「サンドキングス」

ぼくにとって、ジョージ・R・R・マーティンといえば、まず「皮剥ぎ人」なのである。ナイトヴィジョンの「スニーカー」に収録されていたこの傑作中編は、おそらくぼくの中で美化されて今読めばもしかしたらあの初めて読んだ時の感動はないのかもしれないが…

よしもとばなな「デッドエンドの思い出」

たとえば、ぼくは幼い頃、両親に海に連れていってもらって大きな岩の上に座らされて、怖くて泣いたことがある。その三歳の頃の記憶がぼくの一番古い記憶。 たとえば、ぼくは幼い頃、幼稚園に路線バスに乗って通っていたのだが、ある日先に出たはずの父の車が…

竹宮ゆゆこ「砕け散るところを見せてあげる」

なかなか衝撃的なタイトルだ。砕け散るって?見せてあげるって?自爆テロ?しかし、当然のごとく本書の内容はそんな非人道的なものではない。むしろ、その真逆だ。ここで描かれるのは、真っ当な行為の神性とでもいうべき不変のテーマだ。 それは正義。誰もが…

イギリス〈4〉集英社ギャラリー「世界の文学」〈5〉

ちょっと変則だけど、今回はこの中に収録されているフラン・オブライエンの「ドーキー古文書」を紹介したい。無論、他の作品も重要なのだがぼくはいまのところ本書の中では、これしか読んでないのだ。それともう一点、こんど国書刊行会から『ドーキー・アー…

北村薫 編「謎のギャラリー―謎の部屋」

こういうアンソロジーはほんと楽しいね。しかし、ぼくは北村氏と感性が少しズレてるらしい。だからワクワクしながら読んでも、大抵多くの作品の中で気に入るのはほんの一握りってことになってしまう。 本書のラインナップは以下の通り。 宇野千代「大人の絵…

ピーター・ラヴゼイ「ミス・オイスター・ブラウンの犯罪」

ミステリ好きなら御存じのとおり、ラブゼイって人は長編も短編もどちらも素晴らしい手並みをみせてくれる達人なのだが、、この第ニ短編集は第一短編集である「煙草屋の密室」よりは少し落ちるかな?いまでは二冊とも品切れ?「煙草屋の密室」だけでもどうに…

アンドレーア ケルバーケル「小さな本の数奇な運命」

短編といってよいほどの作品だ。本が自らの人生を語るという設定は、いままで読んでいるようで実は読んだことがない。本書の主人公である『本』は、実在の本なのだが、それが誰のなんという本なのかが最後まで明かされない。 一九三八年に出版され、作者はノ…