読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三津田信三「のぞきめ」

ホラーとミステリの融合を模索する三津田信三の新作である。単独の作品で体裁としては作者である三津田氏が編集者時代から蒐集していた怪談の中から、発表を見合わせていたといういわくつきの話があるという導入部で幕を開け、その怪談がそれとは別に紹介さ…

アガサ・クリスティー他「厭な物語」

よくぞ刊行してくれました。こういうテーマのアンソロジーだったら、もっともっと読んでみたい。これパート2、3もアリでしょ。実のところ翻訳小説好きにしたら、これだけ収録されていてこの薄さってのはあり得ない。でも、翻訳ミステリー大賞シンジケート…

ジョン・ソール「暗い森の少女」

ジョン・ソールはひととき刊行が相次いだことがあって、調べてみたらいままでで二十三冊も刊行されているらしい。本書は彼の処女作であり、救いのない話に定評のあるソール誕生の一冊なのである。 忌まわしい伝説、呪われた森、消えた子ども、心を閉ざした少…

ジョナサン・フランゼン「フリーダム」

善にあふれていたとしても、真面目で嘘が嫌いで悪を心底憎む人だったとしても、人は間違った道を選ぶことがある。常に正しい道を選ぶなんてことは到底不可能な話で、人は間違いを犯し、それを乗りこえながら日々を生きてゆくのである。人生のあらゆる場面で…

柚木麻子「私にふさわしいホテル」

作家として世に出る野望に満ちた三十路の女性が主人公。彼女は三年前にあまりメジャーでない文学新人賞でデビューしたものの同時受賞したアイドル女優が注目を浴びたため、目立たぬ扱いを受け一ヶ月後には本を出した女優とは対照的にいまだにくすぶったまま…