この人もタレントさんなのだが、この本のことをとある雑誌で貴志 祐介が褒めていたので、興味をもったのである。本書にはそれぞれ花の名を冠した短編が9編収録されているのだが、ここで描かれるのはいわゆる異常性愛の人々なのである。それはロリコンであったり、色情狂であったり、究極のマザコンであったり、マゾであったり、同性愛者であったりするのだが、そういった性的にマイノリティな人々を登場させて前ケンはなんとも気持ちのいい作品集に仕上げているのである。
技巧的でもなく、いたってストレートに描かれるこれらの物語には、異端者の痛みというような少数派がいつも感じている疎外感が強く反映されていて、それがひしひしと読み手に伝わってくる。
中には犯罪行為ともいえる不法侵入を描いた作品もあったりするのだが、全体的にこれらの「変態さん」を描いているにも関わらず、嫌悪感は感じることがない。むしろ、もっとよく理解したいという前向きな姿勢で次の作品を読むというスタンスが築かれていくのである。
ぼくが感心したのは、漫画の登場人物に恋してしまっている三十路の女性を描いた「デイジー」だ。高校の時に読んだ漫画の登場人物に叶わぬ恋心を募らせる主人公にある日思わぬ朗報が届き・・・。というのが導入部なのだがこれは展開が素晴らしく、まさに息もつかせぬおもしろさだった。
「リリー」で描かれるアセクシャルという概念も勉強になった。こういう人がいるのだと知っただけでも読む価値はある。
まあ、とにかく、一見の価値はありという感じだ。衒うことなくすごく読みやすい言葉で描かれる性的マイノリティの物語。常なら、あまり読むこともないジャンルなのだが、これは読んでよかったと思う。
前ケン侮りがたし。子供たちが毎週楽しみにしている「フレッシュ・プリキュア」のエンディング・テーマの振り付けも前ケンだし、なんか身近に感じちゃいました。