読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

またまたやってしまいます、山風表紙コレクション 今回は短編集。

 またまた山風コレクションです^^。

 

 今回は短編集いってみましょうか。この短編集もなかなか素敵な表紙が揃ってますよ。佐伯俊男先生いい仕事なさってます。

 

 では、さっそくいってみましょうか。

 

まずは、「伊賀の聴恋器」。

 

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 この短編集には「剣鬼喇嘛仏」、「嗚呼益羅男」、「読淫術」、「怪異二挺根銃」等が収められています。タイトルからもわかるように、いわゆるエロ系忍法帖が多く収録されています。でも、これがなかなかの傑作揃い。山風の奇想炸裂って感じの作品ばかりです。



では次は「忍者黒白草紙」。

 

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 これは短編集じゃないんでしょうが、ぼく的には感触が短編集だったんで今回取り上げてみました。本書の影の主人公は天保の妖怪 鳥居耀蔵忍法帖で語られるわりには、本書には他の忍法帖のように忍法は出てきません。明治も近い世が舞台だからそれもまた然りでしょうか。だから数ある忍法帖の中では、少し印象が薄い。ミステリ的趣向もあったりして、なかなかおもしろい作品だとは思うのですが。



次は「忍者六道銭」。

 

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 「摸牌試合」、「武蔵忍法旅」、「膜試合」、「逆艪試合」、「麺棒試合」、「かまきり試合」、「忍法甲州路」収録。まず収録作のタイトルに『試合』が多いことに気づかれると思いますが、本短編集では忍者同士の闘いを中心に著者自らがセレクトした短編集なのだそうです。



次は「忍法行雲抄」。

 

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 表紙に描かれているのは織田信長と果心居士。裏表紙の甕から首を出しているのは明智十兵衛光秀です。本短編集で印象深いのはやはり表紙になってる「忍法死のうは一定」ですね。あの戦国のメフィストフェレスといわれる果心居士と織田信長が登場するんですから、たまりません。首がはえてくる忍法も結構印象に残ってますけどね^^。



次は「忍法流水抄」。

 

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 「叛の忍法帖」、「おちゃちゃ忍法腹」、「近衛忍法暦」、「刑部忍法陣」、「羅妖の秀康」、「慶長大食漢」、「彦左衛門忍法盥」収録。

 

 この中では「叛の忍法帖」と「慶長大食漢」が特に好きかな。「叛の忍法帖」は本能寺前夜のお話。明智光秀の不穏な動きに対して徳川、秀吉、毛利、明智の放つ4組の忍者たちがグルグルと戦い抜いて、勝敗がついてからもまだまだ話は終わらず・・・というなかなか入り組んだお話。短編なのにこの満足感はどうでしょう。



 さてラストは異色の短編集でありながらぼくが一番気に入っている「忍法破倭兵状」です。

 

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 この短編集は、異国なるものをテーマに編まれています。

 

 秀吉の朝鮮出兵の時代を舞台に日朝の忍法合戦が描かれる表題作や、切支丹のために信長が領地として与えた地が甲賀だったために、南蛮と甲賀のゲリラ戦がはじまるという「甲賀南蛮寺領」、秀吉に世継ぎが産まれたことで荒れる秀次の元に訪れる果心居士が見せる幻術を描く「忍法おだまき」、熱田神宮に奉られている神器『草薙の剣』が異人により盗まれてしまうという事件の中、堀部安兵衛、スウィフト、海賊キッドが入り乱れてのお宝探しとなる「ガリヴァー忍法島」などなどの異色作が目白押し。なかでも一番傑作なのが、巻末に収録されている「お庭番地球を回る」です。咸臨丸にてアメリカに向かう遣米使節が目にする異国の不思議。アメリカ側では聞きかじった忍者というものに興味をしめし、忍法を見せてくれとしつこく言ってくる。そこで最後に見せた大掛かりな忍法とは?この作品は、ずっと心に残ってますね。山風の短編らしからぬ爽やかさがとても印象的でした。

 

 というわけで、長々と書いてまいりましたが、このへんで終わりにしたいと思います。最後まで付き合って頂いた方、どうもありがとうございました。