タイトルそのままに、王子が戦国の世に降臨するのである。王子?どこの?
そんなこたぁ、どうでもいいのである。王子は王子だ、黄金色の髪、雪のように白い肌、紺碧の眼、そして金で縁取りされた青い装束に純白のマント。カボチャのように膨らんだ短いパンツにこれまた純白の脚にぴったり張りついたタイツ。まごうことなき王子そのものなのである。
虐げられている民がいて、残虐の限りを尽くす。殿様がいて、そこにはあろうことか純白のドレスに身を包んだ金髪碧眼の姫までいる。王子は、姫を探してこの地におりたったらしい。さて、物語の運びとしては、この王子が民を救うという流れになるだろうことは、想像に難くないよね。
敵の城には、身の丈十メートル以上はあろうかという、闇夜軒と電奇坊という鬼が使役しているのに加え、顔を包帯でぐるぐる巻きにした綺羅星一羽という剣の達人がいるという。
さて、この王子いったいどうやってこの窮地を乗り切るのか?
結論からいえば、『ワンピース』でルフィがギアを上げて敵に勝つように、圧倒的な力の差がある強大な敵をこの王子はあっけなくやっつけたりするのである。そういった意味でカタルシスはまったくないし、盛り上がりに欠けるのも事実。まわりを取り巻くキャラも類型を脱しないステレオタイプばかりで悪くいえば典型的、よくいえば馴染みやすくとっつきやすい。だから、話がスルスルと頭に入ってくる。大いなる齟齬はこの際横に置いておいて、作者の作る虚構の波に乗ってどんどん進もうではないかという気になる。その上語りは信頼できる。安心して読んでいける。数々の悪行が描かれ、多くの血が流れてもこの安心できる語りにのって、彼方に光る希望の光を見るためにページを繰るのである。
というわけで第二巻も読もうかと思ってみればあーた、紙の本が手に入りづらい状況なのですことよ。