読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

山田風太郎「自来也忍法帖」

 

 

自来也忍法帖 (1981年) (角川文庫)

自来也忍法帖 (1981年) (角川文庫)

 

 

 正直いって、本書は忍法帖の中では下の下の作品なんだろうね。風太郎自身の評価によれば本作はC評価(ちなみに、この作者自身の評価は読者の評価とは逆をいくものも数多くあります)てことになってるけど、ぼくはこれ忍法帖の二冊目として読んだから、結構面白かった記憶が残っているのでございます。

 自来也って、もともと忍者物の総称くらいの感じでぼくなんかはとらえていたから(あの蝦蟇に乗って巻物くわえて印を結ぶ姿ね)忍法帖に対して素地のなかったぼくはノリノリで読んだというわけ。

 ストーリーを簡単に紹介すると、徳川家斉の将軍お目見えの儀式の最中、伊勢国藤堂家の世継ぎである蓮之介が突然四つん這いになって激しく腰を振りだし、挙句の果てにおびただしい精汁を垂れ流して悶死するというすんごいオープニング(びっくりでしょ?)から、伊賀無足人組の頭領である服部蛇丸の藩乗っ取りの陰謀が明らかにされ、それと並行して世継ぎのいなくなった藤堂家に対して将軍第一の寵臣中野石翁が家斉の第33子(33子!!)徳川石五郎を藤堂蓮之介の妹である鞠姫の婿として送り込んだのは良しとして、この石五郎が唖(おし)だったというなんとも不思議な展開。で、自来也はというと悪者である服部蛇丸に立ち向かうヒーローとして颯爽と登場するのであります。

 この石五郎が物語に清涼感を与えてくれていて、いい味だしてるんだよね。「ら、ら、ら」っていうセリフが読んで三十年以上たったいまでも耳に残っております。忍法の話をすると、敵の伊賀無足人組忍者ってのがみんなくノ一なもんで、オープニングの派手な悶死を引き起こした「忍法精水破」を筆頭に、風ちゃんエロエロ編み出してくれちゃってます。

 いまとなっては、本では手に入りづらいけど(何年か前に文春ネスコから復刊されていたっけ)Kindle版では安く読めるみたい。気になった人はぜひぜひ読んでみてください。