実は「ハンニバル・ライジング」読んでないんだよね。本書は全く別物だからどうでもいいんだけどね。
カリ・モーラとは、本書の主人公の名前。凄惨な過去を乗り越えて、いまはマイアミで夢を実現するために日々を暮らしている聡明で魅力的な女性だ。彼女が管理を任されている今は空き家の大邸宅に尋常でない男たちが乗り込んでくる。映画の撮影クルーだというが、堅気でないのは一目瞭然。さて、彼らはどんな目的でここへやって来たのか?
これが導入部ね。だいぶはしょってるけど。で、ここから話はふくらんでいくわけなのだが、展開に関しては良質な映画を観たかのような満足感があるにもかかわらず、これがあのトマス・ハリスの手になる作品だと再認識すると少し評価が下がる。
具体的にいうと、登場人物に厚みがないのだ。かのハンニバル・レクターやクラリス・スターリング、そうそうメイスン・ヴァージャーなんて強烈なのもいたよな。とにかく、ハリス氏の代表作であるハンニバルシリーズに登場する彼らに匹敵するような重厚で存在感のあるキャラクターが皆無なのだ。だって、主人公のカリ・モーラでさえぼく的には印象が薄かった。はっきりいって肌の色はわかるけど、顔は見えてなかったもんね。いや、印象の話ですよ。
敵役として描かれる臓器密売業者にして全身無毛の変態男ハンス・シュナイダーにしたって、レクターの足元にも及ばないし、バッファロー・ビルの不気味さにも程遠いもんね。なぜかっていうと、彼に関しての書き込みが少ない上に活躍もあまりないから、記憶に刻み込まれないのだ。だって、薄すぎるもの、トマス・ハリスの作品にしては。
というわけで、非常に軽く読めてしまうのであります。中身が薄っぺらいわけじゃないし、おもしろくないわけでもないんだけど、とにかく軽い。いや、悪口じゃないんだけどね。