今回は、最近読んだレア本の紹介をしたいと思います。
トム・デミジョン「黒いアリス」。
この本、表紙もインパクト大なんですが内容もかなりブッ飛んでます。
これは言っても違反じゃないと思いますが、本書の要は主人公のアリスが誘拐されて黒人にされてしまうということなんです。アリスは白人なんですが、メラニン色素を増やす薬剤を投与されて黒人になってしまうんです。
そんな絵空事!と笑ってしまいそうなんですが、これが現実に実行可能だっていうんだから驚いてしまいます。実際、白人女性が薬によって黒人になりすまし、黒人社会で一年間生活したルポが本になっているそうです。
で、黒人にされてしまった少女はいったいどうなってしまうのか?
本書の内容は、はっきりいってかなりキツイ。KKKの実態なんかが描かれ、人種差別はなはだしい内容になってるんです。この本現在絶版なんですが、おそらくこの先復刊されることはないんじゃないかと思われます。
それほど、本書に描かれている事柄は問題がある。人種差別にしてもそうだし、事件の真相についてもかなりショッキングなんです。
しかし、しかしです。本書の全体の印象はそんなに悪くない。それはひとえに主人公のアリスの天心爛漫さによって救われているんです。アリスが聡明で、逆境に負けない性格なもんだから読んでるほうも過酷な事実をストレートに受けなくて済む。本書がミステリーでありながら、ファンタジーとしても受け取れる大きな要因でしょうね。
本書を書いているトム・デミジョンはSFで有名な二人の作家の合作ぺンネームです。その二人とはジョン・スラデックとトマス・M・ディッシュ。ディッシュは最近国書刊行会から「アジアの岸辺」という作品集が出ましたし、「いさましいちびのトースター」の作者としても有名ですよね。
スラデックは、「黒い冷気」、「見えないグリーン」といったミステリーでも有名ですし、SF作品も過去何冊か翻訳紹介されています。
とにかく、このおおいにクセのある作品、もし古本屋で見つけたら即ゲットしてください。非常にレアな本ですが、案外100円くらいで売られてたりします。そういうぼくもブック・オフの100均コーナーで本書をゲットしました。