読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ノンフィクション

アレン ネルソン「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」―ベトナム帰還兵が語るほんとうの戦争

この本で語られるベトナム戦争の体験談は、さほど目新しいものではありません。でもこれは児童書、戦 争から遠い場所で生活する現代の子供たちにとってはショッキングな内容だろうと思います。 なんて言ってるぼくにしたって戦争は体験してませんが、世代が…

ジェラルド・ダレル「積みすぎた方舟」

これはジェラルド・ダレルがアフリカのカメルーンに動物採取にいった時の体験記で、密林に生息する 様々な動物を追い求め、奮闘する姿が闊達な文章で生き生きと描かれています。おもしろいのが、彼が現 地で雇う原住民とのやりとり。特に笑ってしまうのが、…

氏家幹人「大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代」

わずかニ、三百年前には、こんなに巷に死体があふれていたのかと驚くばかりでした。 江戸の人たちはぼくたちよりずっと死体と身近に暮らしていたというわけなんです。 ましてや、その死体や罪人で刀のためし斬りするというのだからまったく考えられません。 …

小林恭二「悪への招待状 幕末・黙阿弥歌舞伎の愉しみ」

歌舞伎を通して江戸の風俗を味わう好読物です。 それも爛熟期の江戸ではなく、大きく変わろうとしている頽廃の香り高まる幕末の江戸なんです。 世は風雲急をつげ、世相は乱れ、庶民は日夜遊興に耽ることばかりを考えている。 今の日本では考えられない世界で…

レベッカ・ブラウン「家庭の医学」

これってノンフィクションなんですね。てっきり小説だと思ってました。ってか、ほとんど小説ですよ ね?作者自らが看取った母との最後の日々。生あるものが、灯火を燃え尽くして魂がぬけていく様が肉親 の目を通してるのにも関わらず、ドライで客観的な視点…