読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

麗羅「桜子は帰ってきたか」

敗戦の年、ソ連の対日宣戦布告に対し関東軍は潰走、満州にいた民間人は難民となる。征服者の立場だったのが一夜にして逆転、彼らは餓えや寒さや殺戮の危険にさらされることになる。散りぢりになる家族夫が妻を捨て、親が子を捨て、数多くの悲劇がうまれた。 …

ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」

ヤングの長編って本書が初めての翻訳なのだ。そういえば、ヤングって短編の人って認識だったもんなあ。本書は以前同じ創元SF文庫から刊行されたロマンティック時間SF傑作選「時の娘」に収録されていた同題の中編を書きのばして長編に仕上げたものなのだ…

ピアズ・アンソニイ 魔法の国ザンス11「王子と二人の婚約者」

ほんと久しぶりにザンスを再開した。本書はシリーズ11巻目。ちょうど10巻目から新展開となってそれまでは1巻づつ話は完結していたのだが(もちろん登場人物の世代交代は順次行われていたけどね)10巻目からは一つのおおきな謎があり、それを解明して…

パトリック・ネス著 シヴォーン・ダウド原案 「怪物はささやく」

主人公は13歳の少年、コナー・オマリー。彼のもとに夜中、怪物がやってくるところから物語は幕をあける。その怪物は、家の裏手の丘にある教会の墓地にたつ大きなイチイの木だった。その木が巨大な人の形をとり、窓の外に立っている。 「来たぞ、コナー・オ…

馳星周「美ら海、血の海」

終戦間際の沖縄での戦いは日米最大の陸上戦となった。ここで描かれるのはその戦火の中を鉄血勤皇隊として従軍した一人の少年の地獄行だ。彼は、その戦争を奇跡的に生き延び現在は宮城県に住んでいたのだが、あの東日本大震災に直面し、60年前の沖縄での体…