日本のSFの若い書き手の勢いが素晴らしくて、いま一生懸命追おうとしてるんだけど、そんな注目株の一人三方行成くんの第二短編集なのであります。
収録作は以下のとおり。
「流れよわが涙、と孔明は言った」
「折り紙食堂
「走れメデス」
「闇」
「竜とダイヤモンド」
表題作は、孔明が弟子の馬謖の首を斬るいわゆる『泣いて馬謖の首を斬る』の故事を驚く展開で描いたトンデモ作品。だって首斬れないんだもの。どうやっても斬れない上にすくすく伸びて食べても切れないんだもの。ああ馬謖、どうして斬れてくれないの?
「折り紙食堂」はね、なんともシュールな作品。二人称だからなんとも不思議な感覚。主導が自分になった感触の上に描かれる世界がなんせ折り紙ばかりなんだから。三つのシチュエーションそれぞれがそれぞれの世界観の中で折り紙を主張している。ああ、なんてシュールなんだ。
「走れメデス」はメロスがアルキメデスになっちゃうんだよね。有名なアルキメデスの原理発見の顛末を描いております。でも、王冠は一つじゃなく無限に増えていっちゃうんだけど。さて、メデスは「ヘウレーカ!」と叫ぶことができたのでしょうか?あ、そうそう、なぜかセリヌンティウスは出てくるんですよ、それもとんでもない状態でね。
「闇」は、これまたシュールな設定。だって死んだら電柱になっちゃうって!電柱の灯りが届く範囲外には死が待っているなんて。さあ、この世界を守るために、電柱になってくれ!
「竜とダイアモンド」は本短編集の中で一番長い作品でもって、一番物語がしっかりしてる。でもね、テーマがドラゴンカーセックスなんだよね。はあ?でも読んでみるとなかなか素敵な話なんだよね。「みょんみ!」って鳴く竜ぼくも飼いたい!
というわけで、デビュー作の「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」は読むかどうかわからんけど、気にはしておこうって感じ。この人しっかりしてます。