大海ともいうべき書物の世界。
めざす場所は、いったいどこなのか。いったいぼくは、どうして本を読んでいるのか。
この強烈な魔力の源は、いったいなんなのか。
これは、ぼくが常に考えていることです。
ただ、おもしろいからという単純な理由ではない何かが、そこにはあると思うんです。
字を追うという作業は、地味なものです。傍からみれば、たいくつこの上ない。
でも、その時読書をしているぼくの頭の中では、異国の情景が広がっていたり、ゾクゾクする恐怖を味わ
っていたり、人事ではない哀しみに打ちひしがれていたりするんです。
バーチャルな体験なんですよね。
手軽に味わえる擬似体験。
でも、それだけじゃない。知識の容量が格段に広がるし、思索過程も複雑になっていく。
人の気持ちがよくわかるようになるし、いろんな出来事に対して心構えもできたりする。
読めば読むほど、器(うつわ)が大きくなっていく。
柔軟さも備わって、自由な発想が生まれてくる。
それが、うれしい。おもしろくてためになるというわけです。
読書の習慣がない人は、過去に素敵な本に出会ったことがないのかもしれません。
動機はなんだっていい。
まず読むこと。ぼくだって、ここでも書きましたが初めての読書は、不純な動機でした(笑)。
そこから、果てしない知の世界が広がっていくんです。
書を捨て、町に出ることも大切ですが、一度も書を知らずに一生を終えてしまうほうが悲しい。
ぼくは、そう思います。