読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

山田悠介「その時までサヨナラ」

山田悠介の作品を読むことになるとは思ってもみなかったが、知人にすすめられて本書を読んでみた。で、これがけっこうスルスルとおもしろく読み終わったわけなのだ。以前から山田悠介というと壁本だとか、文章が滅茶苦茶だとか噂できいてたけど、文章に関し…

英国紙ガーディアンが選ぶ必読小説1000冊!

英国の新聞、ガーディアン紙が、専門家や批評家らによって選出した長編小説限定の必読書1000冊なのだが、ぼくが既読なのは75冊。それぞれジャンルに分けて選出されている中で、やはり一番多く読んでいるのは〈Crime〉、続いて多いのが〈Science fictio…

トニ・モリスン「青い眼がほしい」

本書は、かなり革新的な小説だ。ページを開くとまず読者はアメリカの教本で有名な「ディックとジェーン」の一節を読むことになる。 『家があります。緑と白の家です。赤いドアがついています。とてもきれいな家です。』 これに続く文章はアメリカの幸せな白…

平山蘆江「蘆江怪談集」

平山蘆江という人のことは、まったく知らなかった。あの泉鏡花と怪談会を開いていたそうで、大正から昭和にかけて活躍した今でいうところのジャーナリストだったらしい。怪談会を催すくらいだから、この人、怪談には目がなくて、本書のような怪談集を出して…

ディーノ・ブッツァーティ「モレル谷の奇蹟」

こういう体裁の本(どういう体裁かというと、絵と一緒になった小説のことね)は、過去にもたくさん刊行されていて、基本ぼくはそういう類の本が好きじゃないのだ。小説は小説として文字だけで楽しみたいという気持ちが心の奥底にあって、それがたとえ挿絵だ…

畑野智美「国道沿いのファミレス」

恋愛小説に代表されるいわば普通の人々を描いた小説は、ミステリやSFやファンタジーのように日常からかけ離れた部分に興趣をもたせる類のそれと違って奇をてらった要素がない分、純粋にストーリーやキャラクターの魅力で読者を惹きつけなければいけない。…