ウッブ・ステーションをとりまく連接モグは、人間の創造値を超えた建造物であり、それは見る者に脅威と畏怖をあたえるに充分な神の手になる光の神殿だった。舟に乗った者しか見ることのできないこの宇宙の蜘蛛の巣は総面積約4000万Km2、オールド・アースの衛星である月の表面積とほぼ同等なのだがそれはビリジアンに輝く細い線が目に眩しい宝石の塊だった。網の目に広がる緑のスタニウム・メタルの鋼線は宇宙に漂う星間物質を貪欲に取り込み、それをエネルギーに変換してウッブ・ステーションの熱源に変えている。人類が到達できなかったこの科学技術をあのトーハはなんなく現実のものとした。彼らの種族は人類にとってまさに神だった。神々しく偉大であり、存在自体が無限の力だった。圧倒的な力の差を見せつけられた人類は難なく彼らの奴卑となった。
ラムジェット恒星船に乗せられたおれは、こうして30億光年も離れた彼らの中継点であるウッブ・ステーションに連れてこられた。恒星船では、隣りにAKB48の板野友美がいてあのアヒルのような口をとがらせて不満そうな顔をしていたが、おれには何もしてやることができなかった。別にファンでもないからそれほど気にかけなかったのも事実だが。
ウッブ・ステーションでは、毎日トーハの奴卑として使役している。気に入られれば、ずっと彼らに仕えて寿命をまっとうできるのだが、気に入られなければ彼らの食料として食肉加工されてしまう。こんな過酷な運命を担わされた人類は皆一様に虚無的になってしまった。
これは悪夢だ。少しだけAKBが出てきたのはラッキーだったが、でもぼくがファンなのはこじはるだから、これもそれほどラッキー要素ではない。そしてあとはみな悪夢。トーハに食べられる現実も悪夢だし故郷であるオールド・アースに二度と戻れないのも悪夢だ。
そんな夢をみながら、ぼくはでも幸せだった。だってここに登場するウッブ・ステーションの連接モグの美しさは言語に絶するものだから。これを見れただけでも最高に幸せなのだ。