赤いものがムショウに食べたくなってしまった。だからとりあえずリンゴを20個食べる。しかし、まだ
物足りない。トマトが真っ赤だからトマトを食べればいいと思ったが、生憎ぼくは生のトマトが大嫌いな
のだ。だから、ケチャップを食べることにする。皿に絞り出したケチャップをスプーンですくって口に運
ぶ。美味い。とってもウマイ。一本丸々食べてしまったぼくは、赤いゲップをして周りを見回した。
まだ探しているのだ。赤いもの。何かないだろうか。赤いラディッシュ、赤いイチゴ、赤いパプリカ、赤
いトウガラシ。いくら食べても物足りない。いったいぼくの身体はどうしちゃったんだろう。
そうこうしているうちに、小便が赤くなる。どぼどぼと迸る小便を見てると、喉がかわいてしまう。飲み
たいのだ。赤い液体をゴクゴク飲み干したいのだ。赤いワインがあるじゃないかと思うが、ぼくはアルコ
ールを受け付けない。だが、小便を飲むのは抵抗がある。そこで思いついた。血があるじゃないか。真っ
赤な血を飲めばいいのだ。でも、どうやって?ゴクゴク飲むほどの血がいったいどこにあるのか?
悶々としていると、パラパラと雨の音。ぼくは、なんとなく窓の外を見てみる。
そして驚愕。降っているのは血の雨だ。真っ赤な血の雨がふりそそぐ。ぼくはたまらず外に飛び出す。
顔にかかる大量の血。口を大きく開け受け止める。ウマイ。なんてウマイんだ。ぼくは歓喜に震え、おの
のく。そして心から満足する。ああ、究極の赤い食べ物は『血』だったんだ。