衝撃のデビュー作の続編ということで、前回大いに楽しんだ人には文句なしに楽しめる本になっている。
ホルモーに関連する話が六篇おさめられているのだが、スタンス的には続編というよりはスピンオフだ。
各篇趣向が凝らしてあって、まったく飽きさせない。それぞれがリンクしている部分などは内輪のおもし
ろさにあふれ「鴨川ホルモー」の懐かしさも相まってたまらない興趣になっている。今回六話しかなかっ
たが、もっともっと読みたいと思った。この世界をもっともっと享受したいと願った。
それほどまでに、ホルモーの世界は奥深く味わい深いのだ。何がいいといって、万城目氏描くところの登
場人物たちの精彩さ、表と裏の相関関係の緻密さ、無理のない伏線、あらゆる点においてパーフェクトと
いっていい出来栄えで、これ以上は求められないなと感じてしまうほど堪能させてもらった。
いつもならここで各篇について一言コメントするのだが、今回はそれをやらないで感想をすすめたいと思
う。なぜならば、ここで各篇について語ってしまうとこれから読む方にとって、興を削ぐことにもなりか
ねないからだ。
しかし、ただ一篇これだけは言及しておきたいと思ったのが「長持の恋」である。これは万城目版「愛の
手紙」だ。あのジャック・フィニィの名短編のオマージュとして書かれたとしか思えない話だ。そこに歴
史的事実をからめ、物語をふくらませ、ましてやあの名物男のギャグとしか思えないあの部分に話が集約
するところなど、お見事としかいいようがない。
他にも色々言及したいのだが、ここはグッと堪えて我慢しよう。本書は万城目氏が構築したホルモーの世
界をさらに押し広げ、生きた世界にまで昇華した成果である。もっと小粒な作品集なのかと思っていたが
うれしい誤算だった。この人にはこれからもホルモーの世界を描き続けていって欲しい。そう切実に願っ
た一冊だった。
それにしても名称だけだが、まさか自分の住んでるところまで出てくるとは思わなかったなぁ^^。これ
ってなんかむず痒いんだけど、うれしいよね?