読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

岡田利規「わたしたちに許された特別な時間の終わり」

「本が好き!」の献本第三弾である。

しかし、この本の書評はできることなら書きたくなかった。そう、ぼくはこの本まったく受け付けなかっ

たのだ。はっきりいって読むのが苦痛だった。

本書は第49回岸田國士戯曲賞を受賞した「三月の5日間」を小説化したものと、もう一編「わたしの場

所の複数」の二編をおさめたとても薄っぺらい本である。

「三月の三日間」は出会ったばかりの男女がイラク空爆のそのときに、渋谷のラブホで4泊5日するだけ

の話である。これが三人称、一人称(僕、私)入り混じりのまさしく垂れ流しといった感じの文章で綴ら

れてゆく。このスタイルが悪いとは言わない。こういうのもアリだと思う。一人称部分の思考の流れをと

らえたモノローグは妙にリアルな感触で、実際つねに頭の中で繰り広げられている自問自答はこんな感じ

なのだろうと納得してしまうのだが、これはこれで結構煩わしいものがある。ぼくの頭が古いのかなぁ。

ほんと受け入れがたかった。戯曲のほうは井上ひさし野田秀樹の絶賛を受けたらしいが、いったいどん

な感じなのだろう?「週刊現代」でも鴻巣友紀子が本書のことを褒めていた。あの鴻巣友紀子がである。

信じられない。少なからずショックを受けた。自分の感性を疑ってしまう。でも、これだけは譲れない。

ぼくは本書を否定する。真っ向から否定する。

「本が好き!」の趣旨から大きく外れてしまった。非常に残念だ。だから本書の記事は書きたくなかった

のだが書評を書くのが条件なので書かざるを得なかった。まったくトホホな結果になってしまったなぁ。