この本を読んだのはたいそう昔のことなのだが、久しぶりに大笑いしたミステリとして記憶している。
島田作品としては軽いタッチの作品であり、トリックもさほど感心するものではなかったが、無類に楽
しいミステリだった。漱石とホームズの邂逅というアイディアは、山田風太郎の「黄色い下宿人」とい
う短編で既出だったが、島田氏はこのパスティーシュを漱石とワトソンの手記を交互に配するという憎
い演出で立派に描いてみせた。
いやあ、ほんとに笑った笑った。これから読む方がおられるなら、これは忠告しておこうと思う。本書
は公衆の面前で読んではいけません。よく、電車の中にも関わらず本を読んでて涙が止まらなくて恥ず
かし思いをしたという話をきくが、本書は逆。他人が一人で笑ってるのを見ることほど寒々しいものは
ない。泣くのは涙が流れるだけで静かなものだが、笑うとなるとそれはまた別の話。「ぶおぅっ」とか
「ぶはっ」とか「うくくく」とか、笑うほうも我慢しようとしてるもんだからその笑いは暴発的なものに
なってしまう。いってみれば、シチュエーションコメディのボケ役をあなたがやるハメになるのだ。
それだけはどうしても嫌だと言われる方は、どうか自宅で本書を楽しんでいただきたい。
そして思う存分笑ってください。でも、これだけおもしろい笑える本だと吹聴したら、逆効果かな?
ぼくも一度、佐藤圭氏にダマされたことがある^^。「100冊の徹夜本」で紹介されてたケンリック
の「三人のイカれる男」。氏の名文に煽られて大いに笑うつもりで読んだのだが、見事にコケてしまっ
た。自分の感性を疑うくらいおもしろくなかったのである。
ブログ仲間の方々は、おそらくこの本を遥か昔に読了されていることと思うが、願わくばこれから読む
方がおられるなら、ぼくと同じ轍を踏まないで欲しいものだ。
そして大いに笑っていただきたい^^。