読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

佐藤賢一「傭兵ピエール」

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十五世紀のフランスなんて、まったく想像つかない、とっつきにくい世界だと思っていたが、読み出し

たらもう止められなくなってしまっていた。

本書で描かれるのは、世界史でも習った百年戦争ジャンヌ・ダルクである。

作者は、フランスの歴史を得意とするだけに、この時代をまるで匂うように描きだしている。

展開はまだ未熟なところもありスムーズではないのだが、それを補ってあまりある骨太の物語だった。

主人公のピエールがいい。このキャラクターが秀逸だ。ヒーロー的な要素と反する部分が多い人物で、

人間としての弱さがあり、真っ当ではない。でも、それがいい味を出していて、正直この人物が死ぬ場

面は見たくないと思ってしまうくらいだった。

物語は、気持ちのいい終わり方をする。読んでいる間も、ずっと胸のすく思いを味わった。

とても夢のある話である。躊躇なくオススメできる面白本だ。