読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ピーター・ディキンスン「キングとジョーカー」

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この本の存在を知ったのは、いまは亡き瀬戸川猛資氏の紹介文ででした。もう、十五年くらい前のことで

す。当時はもう、サンリオSF文庫なんて影も形もなく、手に入れようにもどこにも置いてなかった。

そして、待つこと十数年。インターネットの普及により、様々な絶版本が手に入れられるようになったの

で、ようやくぼくはこの本を読むことができました。

舞台は、パラレルな英国のロイヤルファミリーがいるバッキンガム宮殿。王女ルイーズは、朝食の席でい

たずらを目撃します。王が自分の皿の蓋をとると、大きながま蛙がのっていたんです。最初は他愛ないい

たずらに思われたこの事件が、やがて宮中をゆるがす殺人事件まで引き起こすことになろうとは、この時

は誰も知りませんでした。宮中警備隊とロンドン特捜部の裏をかき暗躍するジョーカー。

目的はなんなのか?ジョーカーとは誰なのか?

結構オフビートな作品でしたね。主人公は王女ルイーズなんですが、彼女が子どもながらに健気でした。

それに、明かされる秘密の酷なこと。ぼくだったら耐えられないかもしれない。

ディキンスンが作りあげた架空のロイヤルファミリーは、人間味にあふれていて、みな魅力的。

特に印象に残ったのは、乳母のダーディかな。

とにかく、本書は絶版のまま埋れさせとくのはもったいないくらいの作品です。

是非復刊して欲しい。切に願います。