読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

梁石日「子宮の中の子守唄」

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 心してかかって下さい。この本は、それほどに過酷な本です。

 なんの苦労も知らず、ぬくぬくと育ってきた甘ちゃんのぼくには、まるで地獄をみているような恐ろしいくらいの修羅場でした。

 生きるという事が、こんなにも苦悩に満ちた喘ぎのくり返しだとは思いませんでした。こういう人生が、本当にあるということにまず驚きます。

 なんの変哲もない、平凡な毎日をおくっている自分が有難いものなのか、恥ずべきものなのかよくわからなくなってしまいました。

 ただ、がむしゃらに女と金を求め、本能のまま行動する獣たち。

 あらゆる汚物を呑み込んで、ドロドロに混ざり合った掃溜めの中での生活。

 水商売のもつ表の華やかさと、裏にある孤独とやるせなさ。

 全部ひっくるめて、あらためて思う。

 どうして、そうまでなるのかと。

 何か近寄りがたい恐怖が、そこにあるように思いました。

 落ちるところまで落ちれば、どんなプライドの高い人間でも生にしがみつき、死ぬことは出来ません。人間とは、愚かですが強い生き物だと思いました。