これも、現在絶版なんですよね。
この本には、あらゆるジャンルをミックスしたようなおもしろさがあります。
先の展開が読めないっていうのも大きな魅力。
とにかく、読んでいてこれほどヤキモキしたり、快哉をさけんだり、うめき声を上げたりした本はありま
せんでした。
大きなジャンル分けでいったら一応スパイ物になるんですが、ぼくはこのスパイ物が大嫌いなんです。
だから、ル・カレもフリーマントルも読んだことありません。長じて基本的に冒険小説は苦手なんです。
戦争物や、国際スリラーなんてまったく受けつけない。
しかし、本書は違った。本書はスパイ物という体裁ながら、フタを開ければまったく違った顔を見せてく
れました。
本書の中で描かれるのは、家族や、恋愛や、友情や、ミステリー。様々な要素がごった煮のようにからま
りあって芳醇な香をたちのぼらせているんです。
続編もあるみたいなのに、一向に翻訳されないところをみると、本書の評判はさほど良くなかったんでし
ょうね。これほどの傑作はそうないと思うのは、ぼくだけなんでしょうか。