読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

西澤保彦「七回死んだ男」

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この人はデビュー作の「解体諸因」を読んで、こんなものかと思ってからすっかりご無沙汰だった。

折原一みたいなポジションに落ち着いてしまうのかなと思っていたのだ。

本書「七回死んだ男」は刊行当時から傑作といわれ続けていたが、どうも最初の本の印象がパッとしな

いので10年以上も寝かしてしまうことになってしまった^^。

話は変わるが、ぼくは西澤氏が触発されたという「恋はデジャ・ブ」という映画が大好きで観た当時は

大変感心したおぼえがある。2月2日を何度も何度も繰り返し体験する男の話なのだが、ビル・マー

ーがまさにハマリ役で、彼なくしてこの映画はありえなかったのではないかと思ってしまったほどだっ

た。最初は嫌な性格だった彼が何度も反復(本書にならって、この表現使います)することによって、

だんだん愛すべき人物になっていくのがよかった。観終わってとても幸せな気持ちになる映画だった。

そんな映画にインスパイアされたという本書は、反復する世界という設定を十二分に活かした本格ミス

テリで、主人公が何度もくり返される惨劇をどうしたら食いとめることができるのか?という謎に焦点

がしぼられている。

タイムトラベルにつきものの干渉が問題になってくるのだが、あの手この手で惨劇を阻止しようとする

主人公の行動に毎回一緒に躍らされた。いったい何が事件を引きおこしているのか?どう行動すれば食

いとめられるのか?

このなんでもあり的なSF設定のなかで、しかし本書は本格のロジックに忠実でありつづける。そう、

本書のロジックはフェアなのだ。それはタイトル一つとってみてもそうなのである。

本書は、大まかに二つのトリックによって構築されている。そのうちの一つは気がついたのだが、もう

ひとつがどうしてもわからなかった。真相を知ってびっくりした。そうか、そういうことだったのか。

それで、すべての辻褄があうことになる^^。しかし、この真相は主観的な立場から見ればおよそ成立

しにくいものだと思うのだが「恋はデジャ・ブ」でも使われていたことだし、気にしないでおこう。

ていうか、あの映画みてたのにどうしてこのトリックに気がつかなかったんだろう^^。

その他、真相を知ってから読み返してみると、これみよがしな伏線がところどころ散りばめられていて

それが、うまく話に溶け込んでいることに気づかされる。上等だ。あまりにも上等な作品だ^^。

これで「解体諸因」の呪縛は解かれた。これからは、どんどんこの人の作品を読んでいこう。

というわけで、次に読むのはどんな本がいいのだろうか?

みなさん、オススメがあったら教えてください^^。