これもいまは品切れ状態なのである。
どういうこと?ラヴゼイといえば、日本でも結構人気ある作家だしその作品のほとんどはいまでも簡単
に手に入るのに、このあいだ紹介した「煙草屋の密室」と本書だけが品切れ状態なのである。
本書は「偽のデュー警部」に続いて二冊目に読んだラブゼイの本だった。
ぼくは、この本で心底ラヴゼイに惚れてしまった。
本書は第二次大戦が終結した直後のロンドンで二人の女が再会するところから幕を開ける。二人は大戦
中、空軍司令部に勤務していた同僚だった。お互い結婚して家庭をもっていたが、片方は公務員の夫を持
つ貧しい生活をおくる身、片方は富豪の夫をもつ大金持ちとなっていた。しかし双方とも自分の夫
に不満をもっていた。そこで動き出す運命の歯車。
本書はサスペンスが横溢しているにも関わらず、ユーモアにいろどられている。しかし、それだけにと
どまらないのがラヴゼイのいいところ。ラストでは、皮肉な展開に誰もが「してやられた!」と思うこ
とだろう。とにかくセンスがいいのだ。ラブゼイの長編を全部読んだわけではないが、「偽のデュー警
部」よりも「苦い林檎酒」よりも本書がおもしろかった。
なにかの法則だろうか?どうして、気に入った本ばかり品切れになってしまうのだろう?