読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

M・W・クレイヴン「ストーンサークルの殺人」

ストーンサークルの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 
 おそまきですよ。ようやく読みました。世評高いこのシリーズ、といってもシリーズ物を抱えるのがあまり好きじゃないからなかなか読まなかったんだけど、これだけ出す本が鰻上りに人気出てくると、やはり読みたくなるよねー。

 で、読んじゃうとやっぱり追いかけなきゃ気がすまなくなるんだよねー。だれがなんと言おうと、これは面白い。何がおもしろいって、まず主人公であるワシントン・ポー(なんて名前なんだ!と思った方、この名前に隠された意味も本書で解明されますからねー)のキャラね。キャラって書くとなんかチャラいけど、彼の存在感がしっかりしてて、バックボーンも巧みに築かれていて素晴らしいし、そんな彼とバディを組むのであろうティリー・ブラッドショーもまったくもって特異な人で、超がつく天才肌なのに人とのコミュニケーションはうまくとれないながらも、曲がったことが嫌いで不正を許せないポーとは強い絆で結ばれてゆく。この二人の性別を超えたお互いを尊重し合う姿になぜか溜飲が下がってしまうんだよねー。

 そんな彼らが対峙することになるのがイモレーション・マン。舞台となる英国カンブリア州に点在するストーンサークルであまりにも猟奇的な死体を彫像する連続殺人犯だ。イモレーションて何?と思うのだが、本編が始まる前に説明があるので、ここにも書いておこう。

  Immolation

   1.神への供物として殺すこと。

   2.殺すこと。とりわけ焼き殺すことを指す。

 ひえー!でしょ?ま、殺されること自体最悪なんだけど、それにしてもこういう殺され方は考えただけで気の弱い人なら寝込んじゃうでしょっての。そんな殺され方をした老人が三体も続けて発見され、その三体目の死体にはワシントン・ポーの名前と5という数字が刻まれていたのである。 

 ある事件で犯したミスで停職中だったポーがこれをきっかけに復帰する。ポーの閃き、ティリーの分析、お互いをカバーしながら、時には常道を踏み外し、時には周りの反感を買いながらも彼らがたどり着いた真実は、あまりにも奥深い闇だったのである。 

 犯人がわかってからもおもしろいって何よ。そこに思うことの真実が余韻を残す。本書があー、おもしろかった!で終わらない理由だ。そう、本書はじっくり堪能できて、一喜一憂して、ページを閉じてからもその深淵に思考がさまようのである。最後の最後で、一気に矢印が上を向くことになるしね。さて、続けて二作目も読んじゃいますよー。たのしみ!!