読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

宮部みゆき「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件」

もう文庫落ちしているが、ずっと以前に購入してあった単行本を読了。「ソロモンの偽証」第一部 事件編である。この話は「小説新潮」で連載されていたのを知っていたのだが、ずいぶん前から書き継がれていたので、多大なる期待を寄せていた。調べてみれば連載…

川のほとりで

記憶にある風景と違うなと思いながら歩いていると、道を横断している大きな川につきあたった。 冷たい風が川上から吹いて、ぼくは思わず首をすくめた。左に目を向けると一人の男に群がる数人の女が目に入った。見てすぐに背筋が寒くなったのだが、女たちも男…

丸谷才一「横しぐれ」

丸谷才一の作品は、読めば必ずなんらかの影響を受ける。それは小説技巧であったり、主題のおもしろさであったりするのだが、とにかくその刺激はぼくの背筋をかけのぼり、とてつもない喜びをもたらしてくれる。 本書に収録されているのは四つの短編。表題作は…

エレナ―・アップデール「最後の1分」

とある田舎町で爆発事故が起こる。本書はその事故が起こる一分前の出来事を、一章一秒で描いていく異色作だ。舞台となるヒースウィック・ハイ・ストリートは昔ながらの建物が軒を連ねる静かな町。最近はそこにチェーン店のコーヒーショップが進出してきて、…