読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

笹生陽子「ぼくは悪党になりたい」

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これは良かった。いまは文庫になったが、ぼくが読んだのは単行本の時だ。オビには北上次郎の推薦の言

葉が書かれているし、これは買いでしょうってんで読んでみたのだ。

主人公のエイジは腹違いの弟がいる普通の高校生。しっかりしているんだけど、やっぱり中身はまだまだ

子ども。おバカだし、小心者だし、なかなかワルになりきれない。そんなまったく等身大で他人には思え

ないエイジ君が人生最大の荒波にもまれてしまうのだから、おもしろくないワケがない。

脇を固める登場人物もキャラがたっていて飽きさせない。親友の羊谷、その彼女のアヤ、そして杉尾さ

ん。みんないい味出してる。ほんとYA出身の作家ってウマい人多いねぇ。つくづくそう思う。ユーモア

もあり、苦味もあり、ドキドキもあり、ワクワクもある。こうやって書き出すと、まるでおもしろい本の

見本のようではないか。なかば真剣にYA出身の女性作家は今後無条件で贔屓にしてしまおうかなんて不

埒なことを考えてしまったくらいだ。

とにかく本書は良かった。薄い本なのですぐ読めてしまうので、興味をもたれた方は是非読んでみていた

だきたい。