いま話題になっている本書をとにかく読んでみた。本書は講談社Ⅹ文庫ホワイトハートで刊行されてい
た。第一巻である本書が刊行されたのは1999年。それが今年第五巻をもって無事完結した。
発表された当時からじわじわと人気が出て、ホワイトハートにも関わらず一般や玄人筋にもファン層が
広がっていき、今年の最終巻刊行はちょっとしたニュースにもなった。
そんなに評判良かった作品なのに、ぼくは今年になるまでその存在をまったく知らなかった。ちょっと
おいてけぼりをくった気分である。さらに、本シリーズは今回めでたく講談社文庫におさめられること
になった。あの小野不由美の十二国記シリーズと同じ扱いだ。こうなってくるとグッと期待が高まる。
しかし、本書の設定にはちょっと頭を傾げた。主人公がプロファイラーなのである。十年前ならいざ知
らず、いまどきプロファイラーはないだろう。と思ったが、目新しくないプロファイリングを扱ってい
ても料理次第ではまったく新しいおもしろさがあるかもしれないと思い直した。
この期待は、ある意味当たっていたともいえるしハズレていたともいえる。
主人公大滝錬摩は男装の麗人という形容がぴったりはまる怜悧な美貌をもつ心理捜査士。三年前のある
事件がもとで今は第一線から退き、その事件の時犯人に頭を撃たれて現在は5歳児並みの知能しかない
かつての同僚藤崎宗一郎の面倒をみている。
そんな折、都内では〈黄昏の爆弾魔―ラグナロク・ボマー〉の犯行による主要建築物を狙った連続爆破
事件が起きていた。過去の実績を知る警察の要請を受けた錬摩は、不本意ながらも捜査に協力すること
になる。
はっきりいってプロファイルに関しては、さして感心する部分はなかった。犯人像に近づく過程にして
もさほどインパクトはなかった。
特筆すべきは、宗一郎の特殊能力である。まさかねー、こんなふうな展開になるとは思ってなかった。
これはある意味サプライズだ。はじめは、なんだぁ『○■▽◆×』オチかーと正直ドン引きしたのだが
これが胸におさまってくると、物語を盛りあげる上で不可欠な要素なのではないかと思えてきた。
錬摩と宗一郎の関係が全体を通しての大きな謎になっているのだ。おそらく、第五巻ではそれが見事に
着地するのだろうと思われる。
まだまだ全面的に信頼関係を結べたわけではないが、とりあえずこのシリーズは順次読んでいこう。
最終巻まで辿りついたとき、この印象がどれだけ好転しているか楽しみである。