ミステリオールタイムベストにもよく顔を出す、あまりにも有名な本である。
本書で描かれるのはアメリカ南部の小さな町の四十年にわたる歴史。上下巻まさしく一気読みのおもし
ろさ。夢中になってしまう。
本書で強く印象に残るのは、大量殺人でも一つの町の歴史でもなく人種差別である。肌の色の違いだけ
でよくもこれだけの事ができるものだと思ってしまう。
こういう差別は行き場のない怒りをおぼえる。この地上から人種差別がなくなることを祈るばかりだ。
四十年以上もの長い年月を共に過ごした登場人物たちはそれぞれ強烈に印象に残る。みんなおきまりの
ステロタイプでもなく、ヒーローもいなければヒロインもいない。おそろしく私たちに近い人たちとし
て描かれている。それが適度な感情の起伏をうみ、よりリアルな世界を構築している。
作者が構築した架空の町であるのに歴史からなにから、あたかも実在したかのような圧倒的な質感だ。
想像力の飛翔ともいうべき堅固な世界。デビュー作にして、ウッズは頂点を極めてしまったのではない
だろうか。
とにかく、あとあと強く心に残る本書は読む価値のある一冊だと言える。
未読の方には強くおすすめします。