読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

遠藤浅蜊「魔法少女育成計画」

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 ここで一つ、ぼくの魔法少女遍歴を披露してみようと思う。記憶している中で一番古いのはやはり「魔法使いサリー」だ。しかし、ぼくはサリーちゃんはあまり好みじゃなかった。同様に「ひみつのアッコちゃん」もおもしろいとは思わなかった。ぼくが好きだったのは断然「魔法使いチャッピー」だった。

 

 何がどう好きだったのかはもう記憶の彼方だ。チャッピーと弟のジュンとパンダのドンちゃんのやりとりがおもしろかったのかな?ストーリー的にも基本コメディタッチなのだが、シリアスな部分もあったりしてそこが好きだったのかもしれない。その後は「魔女っ子メグちゃん」や「キューティーハニー」で素敵なお姉さんへのもどかしいまでの憧れを体感し、いま思えばあれがぼくのヰタ・セクスアリスだったんだなあと懐かしくふりかえってしまうのである。キューティハニーにいたってはオープニングの曲がかかるだけで食事がノドを通らなくなりそうなほど胸が焦がれていたように記憶する。メグちゃんにしてもアニメのオープニングはかなりセクシー路線だったと思うのだが、どうだろう?でも、驚くことにこれらのアニメを観ていたのはまだ小学低学年だったのだ。なんてマセたガキだったんだろうね。でもこの頃にやっていた「ふしぎなメルモ」はあまりピンとこなかったなあ。メルモが大人の女性になる場面もけっこうセクシー路線だったが、こちらはあまり惹かれなかった。どこが境界線なのだろうね。メルモちゃんでよく覚えているのは、メルモの弟が、薬の分量を間違えてカエルになってしまい、カエルゆえに薬を飲むことができなくなってしまって人間に戻れなくなってしまうっていうエピソードだ。彼はしばらくカエルのままで生きることになるのだが、それがある方法で人間に戻ることができるのだ。ぼくは、そこにいたく感心した憶えがある。

 

 その後はしばらくブランクがあって次に注目したのは高校のときだったかな?確か土曜の朝に「魔法の天使クリィミーマミ」というのをやっていて、何気に観てたらけっこうおもしろかったので毎週楽しみにするようになった。これは魔法少女物に芸能界をブレンドするという画期的な作品で、主人公である小学生の女の子が変身した少女があろうことかスカウトされてアイドルデビューしてしまうのだ。この主人公の声を担当していたのが『スター誕生』でデビューしたアイドル歌手の太田貴子。彼女が歌うデビュー曲でありクリ―ミーマミの主題歌でもある「デリケートに好きして」は、その舌たらずな感じが当時のぼくの心を鷲掴みにし、ぼくは生まれて初めてアニメのサントラ盤LPを買ってしまうことになる。弁解するつもりはないが、クリーミーマミの楽曲ってけっこういい曲が多いんだよね。

 

 で、それからまた年月は流れぼくも結婚し、子どもも生まれたのだが、ちょうどミレニアム寸前にやっていた日曜朝のアニメ「おじゃ魔女どれみ」にまたハマることになる。これは当時三つだった長女と一緒に観ていて好きになったアニメで、5年くらい続いてたかな?確かこれのあとにプリキュアが始まったんだよね。ぼくとしては是非ともどれみシリーズを続けて欲しかったが、まそういうわけにもいかないんだろうね。どれみシリーズは何が良いといって、人情に訴える話が多くて胸に迫るのである。大人になってからアニメを観て泣いたのはこのシリーズだけじゃないかな。特によく覚えているのは、大阪から引っ越してきたあいこの話だ。離婚している両親の間で苦悩する姿に涙がとまらなかった。見習い魔女の挫折感や友情の大切さを描いて従来の魔法少女物にはないクールな面もしっかり描かれており、そういった意味で大人の観賞にも十分耐えうるシリーズだ。これはいい作品だったね。

 

 プリキュアシリーズや少しさかのぼるがセーラームーンなんかはまったく気にならなかった。あまり感じ入るものがなかったね。

 

 で、ようやく本書に近づくわけなのだが、本書と設定がどうしてもかぶってしまうのがあの「魔法少女まどか☆マギカ」だ。こちらの方が先行作品だから本書がかぶってるのか。まあ、これほど世間を騒がせた魔法少女物もないだろうね。ぼくも、その話題につられて観たわけなのだが、独特の世界観と死と隣り合わせという設定がいままでにない衝撃をあたえてくれた。この作品観ていない方もおられるかもしれないので詳しくは書けないが、とにかく第10話の衝撃たるや、並大抵のミステリなど足元にも及ばないものだった。ここではじめて明かされる真実は、いままでの世界観が根底から覆されるもので、ぼくは「デビルマン」のラストの壮絶な展開をはじめて読んだ時以来のショックを味わった。

 

 で、本書なのだ。以上のことを踏まえた上で本書の感想を書きたいと思う。先ほども書いたが、本書の世界観はほとんど「魔法少女まどか☆マギカ」の二番煎じだ。でも、まどマギと大きく違うところは、魔法少女同士の殺し合いに特化しているという点だ。そこに作者は魔法少女のキャラクターを詳細に設定してそれぞれの特性を活かすことで物語にふくらみをもたせている。いってみれば、山風の忍法帖のおもしろさだね。この子はこういう魔法が使えて、こっちの子はこんな魔法が使えます。そうやってそれぞれの特性を描くことで独自の縛りが生まれ、物語に緊張感を持たせているのだ。でも、それも山風にくらべたら全然だめなんだけどね。ただ、本書の設定でいままでにないおもしろさを感じさせてくれたのは、魔法少女に変身するという設定だ。へ?どゆこと?と思われた方少し説明させていただきたい。本書に登場する魔法少女は16名。みなそれぞれ実生活での姿を持っているのだが、それが最初は伏せられている。魔法少女といえば、だいたい10~17歳くらいの女の子と相場が決まっているものだが本書ではそこにギミックが仕掛けられている。魔法少女に変身しているのがそれくらいの年齢の女の子だけではないのだ。

 

これ以上くわしく書くと興を削ぐことになるので、書かないが、ぼくはトップスピードとスイムスイムの正体を知ったときに本当に背筋がゾワゾワした。

 

 というわけで試みとしてはなかなかおもしろいと思ったが、ま、これ一冊でもういいかなという感じ。
このあと何冊かシリーズが出てるみたいだが、もう読むことはないかな。