読書の愉楽

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式貴士「死人妻 式貴士生誕80周年 未収録作品集」

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 いまになって式貴士の新刊が読めるとは思わなかった。本書は五所光太郎氏が式貴士生誕80年を記念

して、雑誌に掲載されたまま本には収録されていなかった短編や、エッセイ、評論そして表題作の「死人

妻」の自筆原稿をまとめて私家版で未収録作品集として刊行されたものなのだ。

 だから本書は本屋では買えなくて、↓で直接注文すれば買えるってわけ。

        http://www008.upp.so-net.ne.jp/siki/

 式貴士といえば、学生時代に筒井康隆にハマった直後にたまたま本屋で見かけた「吸魂鬼」を手にとっ

てパラパラ見た途端、まるで天啓を受けたかのようなエロ光線の電撃をくらって即買いし、その男の妄想

を無制限に表現した短編作品に鼻血を止めるのも忘れてむさぼるように読んだものだった。だが、よくよ

く読んでいくとエロい作品ばかりでなく、叙情性豊かでセンチメンタルな短編もあり、かと思えば興味深

い多岐にわたる情報が横溢したペダンティックな作品もあって、たちまちその作品世界に引きこまれ、当

時角川文庫から出ていた短編集をたちまち読み尽くしてしまったのだった。

 そんな式貴士の未収録作品ばかり集められた本書はファンにとってはまたとないプレゼントとなったわ

けなのだが、いままで小説作品しか読んでなかった(あの有名な長いあとがきは別にしてね)身としては

エッセイ作品の中で語られる氏の世界観やポジショニングがわかっておもしろかった。

 また小説作品では収録されている中でいちばん長い「リモコン・レディ」があの懐かしい男の妄想爆発

の作品で、少し叙情の香りもあり式作品にハマっていた当時のことを思い出してしまった。

 絶筆となった表題作の自筆原稿は、これまたライブ感あふれるもので、原稿用紙10枚ほどのものなの

だが、なかなかの悪筆で読み通すにはかなりの忍耐を強いられる。それもまたいいんだけどね。

 というわけで久しぶりの式作品充分堪能いたしました。でもまだ「鉄輪の舞」と「なんでもあり」を積

んだままなんだよね。