工場は楽しい。ぼくは工場でラインにそってモノが作られてゆく過程を見るのが大好きだ。料理を作る過程を見るのも大好きだが、それに劣らず工場見学も大好きなのだ。
そこには必ず新しい発見がある。小学校の頃、コカ・コーラの工場に社会見学に行った。その時の感動はいまでもおぼえている。ただのオートメーションで液体を瓶詰めしているだけの工程なのにね。
いまでも行ってみたい工場はいろいろある。パンやインスタントコーヒーやチューインガムの工場なんか、とても興味がある。どれも他愛ないものばかりだが、どうやってオートメーション化されているのか、どういう工程で作られて製品になっているのか見たくて仕方がない。
本書は、そんな工場を村上春樹が訪問して楽しく紹介しているものなのだが、そのセレクションがおもしろい。人体模型、結婚式場、消しゴム工場、小岩井農場、コム・デ・ギャルソンの洋服工房、CD工場、かつら製造工場とかなり偏ったものだ。
それぞれの工場の仕組み、仕事の内容がまことに楽しく理解できる。村上氏の筆は、軽妙で饒舌、行間からは人柄が滲み出て好感がもてる。安西水丸氏のとぼけたイラストもとぼけた味でとても良い。
そしてなにより、日常で何気なく使っているモノや、よく知っているモノが製品になるまでに、どれだけの工夫をされているかということが理解できてうれしい。これは経済学にも通じるよね。
できれば、ぼくもいろんな工場を見学に行きたい。自分の目で見てみたい。
人間の知恵とは、それだけ凄いものなのだ。