安心してしまうのだ。ホームズがいるだけですんなりと物語の中に入ってゆける。どうして、こんなにまで親しみを感じてしまうのだろうか。これからも、こういうパロディは数多く書かれるのだろうが、大いに歓迎したい。
本書は、そういう数あるホームズのパロディ物の中でもその企画の素晴らしさと、内容の満足度でかなりの完成度なのだ。
というわけで、各作品の短い感想いってみようか。
「悪魔のような機械」 ジョン・ラッツ
ホームズの全盛期にはまだめずらしかった自動車やマシンガンもどきの連発中が出てくる。ちょっと文明批評のきいた作品。オーソドックスだが、やはりいいね。
「幽霊の部屋」 ゲイリー・アラン・ルーズ
おもしろかった。謎の提示から解決にいたるまでなかなかサスペンスフルで読ませた。
「まだら紐の研究」 エドワード・D・ホック
告白するがぼくは「まだらの紐」はあまり好きではない。これはポーの「モルグ街の殺人」と同じで事件の真相を知ってガックリ肩を落としてしまったのだ。だからそんなに評価していないのだが、本編はその「まだらの紐」の続編なのである。着眼点には注目したいが、話が生きてこない。器用貧乏のホックらしい作品だね。
「すばらしきホームズ」 ジョン・L・ブリーン
これは犯罪を描いた作品ではない。もっとコミカルに仕上げればさらによかったかな。
これは犯罪を描いた作品ではない。もっとコミカルに仕上げればさらによかったかな。
「シャーロック・ホームズと『あの婦人』」 マイケル・ハリスン
「芝生の影」 バリー・ジョーンズ
この巻の中で、というかホームズ譚の中でも一、二を争う陰惨で不気味な事件だ。残酷すぎる。やはりドイルでは、こんな話は書けなかっただろうね。
「ガウナス誘拐事件」 ジョイス・ハリントン
この話にはホームズは出てこない。事件ももう解決してしまっている。だが、これは正真正銘のホームズ物なのだ。ラストで明かされるある事実がそう告げているのだ。
以上、上巻の作品を寸評で紹介してみた。次は下巻だ。こちらもなかなかの力作揃い。ほんとこのアンソロジーは楽しめますぞ。
でも、これも絶版なのかな?