読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

東出祐一郎「ケモノガリ」

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 限られた人間だけが莫大な入会金と徹底した調査の上で参加できる殺人を享楽する『クラブ』。彼らは独立間もない東欧の小国の一都市を買い取ってそこで人間狩りを行っていた。日本から修学旅行で訪れていたとある高校の一団が拉致され獲物として供給される。しかしそこに一人イレギュラーな存在がいた。

 

なんの取り得もなかった平凡な少年、赤神桜樹だ。彼には生まれつきの殺戮に対する異常な才能があったのである。彼は、幼馴染であり愛する人でもある貴島あやなを守るため自分の封印された力を解き放つ。
 設定がブッ飛んでてまずありえない状況なのだが、それをねじ伏せてぐいぐい読ませる。ところどころ状況説明でわかりにくい部分が散見したが、それはスピーディな展開が充分カバーしている。主人公である桜樹少年が平凡な自分の中に眠っている『才能』を開花させる部分も周到にバックグラウンドを用意してあって、ある意味ファンタジーっぽい無敵設定に付加価値をあたえている。

 

 いってみれば力業に近いのかもしれないが、これを違和感なく一定の興趣を保って描ききる技量はたいしたものだと思う。ただ、一番楽しみにしていた敵側の娯楽提供者(エンターテイナー)である三人の不気味な怪人、ポイズン・ウィドー、ハリウッド・スター、ロビン・フッドたちがさほどの活躍もなく倒されていったのが残念だった。そこそこ不気味な造形だからもう少し恐怖を煽ってくれるのかと思ったのだが、見せ場が少なかったように思う。

 

 だが、本作には続きがあるのだ。いまのところ第4巻まで刊行されているようで、今後この世界がどのような展開をみせるのか楽しみところである。本書を読了したいまでは、桜樹がすすむべき道はわかっているのだが、それがどのような広がりをみせてゆくのか興味尽きないのである。