読書の愉楽

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ロジャー・スミス「血のケープタウン」

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 いまさらながら、本書を読んでいて海外は怖いなあと思うのである。本書の舞台は南アフリカケープタウン。いうまでもなく世界でも有数の犯罪都市だ。麻薬常習者、ギャング、悪徳警官そして罪を犯してアメリカから逃亡してきた一組の家族。役者が出揃ったところで最悪のノワールが開幕する。

 

 物語の詳細はここでは語らない。何がどうしてどうなってなんてことは本書を読んで確かめればいい。驚くことに、馴染みのない南アフリカが舞台で込入った犯罪劇が描かれているにも関わらず、本書は驚くほどに読みやすい。それはひとえに作者の手腕によるものだ。的確な場面転換と興をつなぐ強烈でスピーディな展開。そしてなにより一番の要因は本書に登場する各キャラクターの描き分けが素晴らしく、頭の中で余計な処理を必要としないので、物語に没頭できるのである。

 

 そしてここが一番重要なのだが、この話、本当にいったいどういう結末をむかえるんだろうと心配になるくらい主人公が追い詰められるのだが、これがとても納得のいくラストなのだ。

 

 本書の解説で、この作品が映画化されると書かれているがどうなったんだろう?2010年の後半から撮影にはいると書かれているが、それらしい映画が公開されたという話は聞いたことがない。サミュエル・L・ジャクソンの配役も決まってるみたいだし、観てみたいものだ。この転落につぐ転落の急直下ノワールがいったいどういう風に料理されているか、興味津々なのである。