読書の愉楽

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フェルディナント・フォン・シーラッハ「罪悪」

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 シーラッハ短編集の二作目である。今回は前回にもましてコンパクトにまとめてあって、遅読のぼくがほんの数時間で読了するくらいスルスルと読めてしまった。長いものでも30ページ短いのならほんの3、4ページの作品ばかりだから読みやすいことこの上ない。というわけで今回の収録作は以下のとおり。

 

 「ふるさと祭り」

 

 「遺伝子」

 

 

 「子どもたち」

 

 「解剖学」

 

 「間男」

 

 

 「欲求」

 

 「雪」
 
 「鍵」

 

 「寂しさ」

 

 「司法当局」

 

 「清算

 

 「家族」

 

 「秘密」

 

 以上15編。中にはあまりインパクトがない万引き主婦の話なんかも入っているが、総じておもしろかった。これが事実をもとにした話だというのなら、おおいに興味を惹かれる。今回も前回同様、不条理に満ちた事件があって、巻頭の「ふるさと祭り」などそのもっともたるもので、いったいぜんたいどういう思考でそんな事件を起こしてしまうのか理解に苦しむ。また偶然がまねいた事件の結末を描く「イルミナティ」や「解剖学」なんてのは、まさしく事実は小説より奇なりって感じだったし、不気味な通奏低音が流れている「アタッシュケース」やクライム物として完成された感のある「鍵」や完全犯罪を描いた「清算」など、なかなかバラエティに富んだ短編集だった。よく前回の短編集を引き合いに出して、今回はあまり印象に残らないなんて感想を見るがそんなことはない。この弁護士さんは才能ある作家でもある。短い作品の中で事件を効果的に印象づける術をこころえている。事件の成り立ちを逆に辿ることで興味を持続させたり、短い段落で区切って効果的に話を進めたりと、オーソドックスだが小説として成り立つテクニックを多用しているところなどは堂に入ったものだ。感情を排し、ほとんど機械的に進められてゆく簡潔な文体は作者の技術なのかクセなのかよくわからないが、それが一種のリズムを刻みひとつのブランドとして定着しているところも素晴らしい。

 

 今度は長編の紹介になるのかな?さて、短編の腕前はよくわかったが、長編の仕上がりはどうか楽しみなところである。