これだけゾンビ好きでゾンビ小説はかなり読んでいるのだが、他のメディアのゾンビ物にはあまり接していない。バイオハザードなどのゲームやあまたある有名無名のゾンビ映画などもほとんど観たことがない。まあ、子どもがいるからというのもあるが、どうもぼくは自分の脳内だけで再生されるゾンビ物が好きなようだ。そんなゾンビ小説好きのぼくの目の前にあらわれたのがこの「憎鬼」。オビの文句に『ゾンビよりはるかに怖い!』なんて書いてあるから読まないわけにはいかないじゃないの。
本書に登場するのは、実をいうとゾンビではない。ゾンビのように人々を襲うのは、同じ人間なのだ。何がきっかけなのかはわからないが、ある日突然凶暴化し、通行人を隣人を家族を『憎鬼』となった者が襲うのである。凶暴化した人間が襲ってくるというシチュエーションのみがゾンビ物とリンクしている本書はいわゆるゾンビ物の変格作品なのだ。
本書に登場するのは、実をいうとゾンビではない。ゾンビのように人々を襲うのは、同じ人間なのだ。何がきっかけなのかはわからないが、ある日突然凶暴化し、通行人を隣人を家族を『憎鬼』となった者が襲うのである。凶暴化した人間が襲ってくるというシチュエーションのみがゾンビ物とリンクしている本書はいわゆるゾンビ物の変格作品なのだ。
本書の主人公は小市民の鑑ともいうべき、しがない公務員のダニエル・マッコイン。駐車違反罰金処理事務所で、威圧的な上司と喧嘩腰の客たちの間で日々ストレスを募らせている。家に帰れば妻と三人の幼い子に囲まれて落ち着く日々もない。そんな彼の回りで、少しづつ日常が崩れはじめる。出勤途中で罪もない老婆がいきなり見知らぬ男に殴り倒され傘で串刺しにされるのを発端に、次々と人が人を襲いはじめたのだ。それは日を追うごとに加速し、やがて社会が崩壊するほどの事態となる。
これは、解説でも言及されてることだが、本書は後半で思わぬ展開を見せる。おっと、そうくるかという感じなのだ。実をいうとこの本にはあと二冊続編があって、三部作構成なのだそうだ。本書を読んだ誰もがそうこなくっちゃと思うはず。是非続く二作品も翻訳出版していただきたい。強くそう願う次第なのである。