読書の愉楽

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深見真「ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック」

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 久しぶりのラノベだが、これがなかなかしっかりした作品だった。剣と魔法のファンタジー世界をベースに特殊部隊アクションのハードさとボーイ・ミーツ・ガールのときめきをプラスした新しい感触の物語に仕上がっているのだ。

 

 舞台はおそらく地球。だが、まったく違う文明のもとに成り立っているところをみると、大きな大戦かなにかで一度滅びた後の世界なのだろう。そこでは二大強国が対立しており、主人公である十七歳のリョウトはメイトリア帝国の国防騎士団・特殊作戦群強襲部隊チーム2に所属する少年兵である。だが、少年兵といっても彼は特殊部隊の一員なだけあって、殺しにかけてはプロフェッショナルであり、人間を破壊する技に熟知した隻眼の戦士なのだ。そんな彼らの部隊に極秘のミッションが下される。それはエルフ族の小国エルフェンクラングに潜入し、貴族の頂点に立つ指導者の妹フランカを拉致せよというものだったのだ。彼らは拉致したフランカを拷問にかけるよう指示されるが、リョウトは命令に疑問を感じてフランカを連れて決死の逃亡をくわだてるのだが・・・・・。

 

 この作者の本を読むのは初めてなのだが、感心したのは軍事や武器においての深い知識や、体術などの的確な描写、それと物語世界の堅牢な構築である。剣と魔法と一概にいっても、それで何でもありなのかというとそういうわけではない。そこにはそこの倫理と論理があるはずで、それを無視した世界観では読者もしらけてしまう。それをこの作者は魔法の成立から軍の配備関係にいたるまですべて綿密に考証して世界を成立させているのである。だから、読み手も安心して物語世界に入っていけるというわけなのだ。

 

 だが、不満がないわけではない。堅牢で確かな世界観は保証されているが、本筋の物語の展開がかなり先読みのできるものであり、次にどうなるかというハラハラ感はあまりない。だが、よどみなく流れるストーリーは難なくラストのページまで読者を運んでくれるし、登場人物たちのキャラクターも確立されてて描き分けがしっかりされてるので、それが楽しい。ボーイ・ミーツ・ガールの要素もちょっとツンデレっぽい雰囲気があったりして、ぼくなど遠い日の恋愛を思い出してしまったくらいだ。

 

 いま、Amazonでみたら来年に本書の第二弾が刊行されるみたいである。どれだけ続くかわからないが、またしばらくこのシリーズを追いかけてみよう。