久々の平山新刊本である。彼の小説はすべて読んできているのだが、ちょっと前に刊行された「他人事」だけはあまり気が乗らなかった。読まなくてもいいやと思っちゃったのである。だからもしかしたら、このままこの人からも離れていってしまうことになるのかなと思っていたのだが、今回刊行された本書はあまりにも魅力的な内容で思わず買ってしまった。まして本書は2000年に刊行された「メルキオールの惨劇」以来の長編作品なのだ。これは読まねばならないでしょうっての^^。
話の筋は簡単だ。身寄りのない、いいかげんな人生を送ってきた女オオバカナコがやばい仕事に手を出して、ひょんな事から殺し屋ばかりが集う会員制『ダイナー(定食屋)』でウェイトレスとして働くことになる。そこはまさしく地獄の一丁目。人を人とも思わない怪物達が毎日訪れ、血がぶちまけられることになる。カナコは、そこで試練の日々を送ることになるのだが、狂気にまみれた怪物達の中でいったい彼女は生き延びることができるのか・・・・。
以前から思っていたことなのだが、平山夢明という人はグロテスクとスタイリッシュを絶妙のブレンドで描くことのできる作家なのである。もちろん、どちらの要素も一級品だから読むほうもそれなりの覚悟がいるだろうし、正直読者を選ぶ作家でもあると思う。だから、一度ハマってしまうと、もう気になって仕方がないのである。今回のように作者が結構本気で挑んできた場合などは、もう首っ玉つかまれて引き摺りまわされているようなもので、あなたのなすがままにって感じで身をまかせるしかないのである。
今回もまあよくこれだけ凄いことを引っ張り出してきましたねって感じで、あらゆる残虐行為が描かれる。それはちょっと常人には思いつかないもので、さすが「異常快楽殺人」の平山氏だなと妙に納得してしまうのである。また、ダイナーを描いてるだけあって、ここに登場するバーガーに代表される定食メニューは垂涎ものの逸品ばかりで、まことに悩ましいかぎりだった。
これだけ異常なことが描かれながら、物語はいたってノーマルな着地をみるのだが、それは読んでいる間からこちらが望んでいたことなので、それでいいのである。
いやあ、ほんと久しぶりの平山長編、存分に楽しみました。