読書の愉楽

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カーレド・ホッセイニ「君のためなら千回でも」

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「本が好き!」の献本である。

 

2007年の暮れに献本いただいてたのに、いままで読まずにおいてあった。一度は手に取ったのだが、どうも入り込めなかったのだ。本書はアフガニスタン生まれの作家カーレド・ホッセイニのデビュー作である。我々日本人には縁遠いかの地がどういう状態になっているかということは、いくら世界情勢に疎いぼくでも知っている。たくさんの人の命が奪われ、多くの涙が流されたあまりにも貧しい国。本書の主人公であるアミールはそのアフガニスタンからアメリカに亡命しているのだが、そこにかかってきたパキスタンからの一本の電話が彼を真実に向かわせる。それは過去からの電話であり、償いの終わってない罪へと向き合う辛くて厳しい旅のはじまりを告げる電話だったのである。

 

アフガニスタンが舞台ということで、日本人にはピンとこない宗教や文化や歴史の積み重ねの上で語られる物語ではあるのだが、描かれる事柄は人間の根源に訴えるものであり万国共通の感情だ。それは力に対する恐怖であり、弱者に対して勇気をしめさず保身に徹してしまう小心さである。アミールはそのことによって唯一無二の友を裏切ってしまう。

 

そんな彼が長い年月を経て、故郷カブールに帰ってくるのだが、そこは以前住んでいたころとはまったく様変わりした荒廃した土地となっていたのである。ソ連の侵攻、タリバン多国籍軍との戦闘、銃弾と数多くの血と人々の悲鳴によって壊されたアフガニスタン。少年時代を過ごしたあの輝ける日々は思い出とともに永遠に失われてしまったのか。

 

故郷が様変わりし、荒廃してゆく中でアミールは過去のきらきらした日々の中に隠されていた真実を知ることになる。知らなければよかったとも思える真実。だが、彼はそれを受け入れることによって贖罪を請う。ラストで繰り返される本書のタイトルである『君のためなら千回でも』というセリフを読んだときには正直泣きそうになった。

 

どうしていままで読まなかったのだろう。こんなに心に残る素敵な物語なのに。