読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

戸川昌子「透明女」

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 戸川昌子といえば、まがりなりにも「大いなる幻影」で江戸川乱歩賞を受賞した才人である。といってもぼくはいまだに「大いなる幻影」も「猟人日記」も「火の接吻」も読んだことがないのだが、もしかしてこれは読む順番を間違えたかな?ね、そうでしょ、もねさん?

 戸川作品で読んだことがあるのは新興宗教が登場するかなりエロい「私がふたりいる」一冊のみだった。

 それっきり、本書「透明女」を読むまで、すっかりご無沙汰していた。ぼくの中では、戸川昌子はエロい作家という認識がインプットされているので、あまり頻繁に手の出る作家でもなかったのだ。

 で、もねさんのブログ記事に触発されてこの本を読んでみたのだが、まさしく聞きしに勝る怪作だった。

 この本、かなりブッとんだトンデモ本だ^^。

 全編これセックスばかり。でも男として、これは許せる。ぼくも嫌いじゃないからね。しかし、しかしである。このお口あんぐりの真相はどうよ?読んでて、一瞬思考がフリーズしましたよ。

 ジャンル分けするなら、本書はやはりSFなのだろう。かなりトンデモな世界だが、一応SFとして区別したほうがいいと思う。主人公である神保壮太郎は、やり手の芸能プロデューサー。彼の部下が巷で聞き込んだ話に惹かれて、『幻の女』を捜し始める。しかしこの幻の女、おいそれとは捕まらないのである。

 あの手この手で追いかけるうちに壮太郎は、誰も経験したことないような、めくるめく性の冒険を体験することになるのである。

 まず、本書には数多くのツッコミ所があるのだが、この主人公の壮太郎のスーパーマンぶりに笑ってしまう。窮地に陥った彼のとる行動は、あまりにも現実とかけはなれていて、「お前は007か!」と何度ツッコんだことかわからない。

 話の展開も、まるで新聞連載みたいに場面転換がはやく最初から最後まで基本的に同じ展開なのである。

 だが、それが次から次へと転がされるので、わかっていながらもついつい読んでしまうという感じ。

 なにかというとセックス。次から次へとセックス。場面が変わってセックス。窮地に落ちてもセックス。

 犬になってもセックス。一息ついてセックス。まあ、よくこれだけ書いたもんだ^^。しかし、これだけ書かれるとこちらの感覚も麻痺するのか、それほど興奮はしなかったんだけどね。

 ま、とにかく、本書は快作にして怪作。トンデモ本の傑作として永遠に記憶に残り続けることだろう。

 でも、やっぱり悔いは残るのである。もねさん、これ先に読んじゃいけないんでしょ?ね?ね?