いまさらなのだが、この児童文学の名作を読んでみた。プロイスラーといえば、「クラバート」をいつか読もうと思って買ってあるのだが、これはいまだに読めていない。
だが、プロイスラーといえば「大どろぼうホッツェンプロッツ」なのである。この名作を子どもの頃に読んで夢中になったという人は数知れない。生憎、ぼくの子ども時代の読書といえば、もっぱらマンガばかりだったので、こういった児童文学の名作にふれて感銘を受けたなんて素敵な思い出はまったくないのである。
というわけで、いまになってカニグズバーグやウェストールの本なんかを読んでおおいに感銘を受けるというなんともお粗末な次第となっているわけなのだ。
で、この「大どろぼうホッツェンプロッツ」なのだが、これがなかなかおもしろかった。児童文学の傑作は、やはり大人が読んでもおもしろいのだ。
ここで描かれる物語のおもしろさは、いってみれば落語のおもしろさなのだ。毎度ばかばかしいお噺でといって始まるほんとにバカな話のおもしろさ。ありえない設定と、ありえない登場人物。そしてそれらが絡みあってありえない方向に物語が転げていく。しかし、そこに一筋の奇妙な論理がうまれる。そして話がオチていく。
まずおばあさんのコーヒー挽きが盗まれる。それを取り戻すべく知恵を絞る孫のガスパールと親友のゼッペル。七本の短刀を持つ世にも恐ろしいホッツェンプロッツ。この大どろぼうと子どもたちの知恵くらべは、大魔法使いツワッケルマンをも巻き込んで、思わぬ方向へと転がっていくのである。
プロイスラーはこの短い話において周到な伏線を用意し、それを見事に回収している。こういうナンセンスな設定の中においてそういったプロットの妙味を味わわせてくれるところが、本書の旨味となっているのである。
これはわが子たちにも是非読んでもらいたい
というわけで、本書は我が家で巡回中なのである。いまは長女が読んでおりまする。