読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

本谷 有希子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

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この人最近注目されてるの?不勉強でまったく知りませんでした。タイトルがおもしろかったので、なん

となく手にとってしまったが、これ結構いいんじゃないの?

本書で描かれるのは、確執だ。家族という小さなコミュニティで起こる愛憎劇だ。人間の本質としてのい

やらしい部分がリアルに描かれている。薄っぺらい本なのに、何度感情を逆撫でされたことだろう。

もともとこの小説は戯曲だったそうである。こんなすごい芝居一度観てみたい。今夏映画が公開されるそ

うだが、そっちも気になる。なんとも悩ましい作品だ。

ここでこの物語の簡単な紹介でもすればいいのだが、それは出来ない。別にネタバレがどうのこうのって

いう作品ではないのだが、ぼくの本能が『これは情報を得ず読んだ方がいい』と告げているのだ。

だから、あえてあらすじは紹介しない。ただ、これは家族の物語だ。熱く、激しく、狂おしく、突風のよ

うに過ぎさる感情の嵐だ。そういった意味では、本書の表現媒体は劇画が最適なのかもしれない。もしく

は、昼メロのテンションが一番合ってるのかもしれない。決してこれは貶しているわけではない。ただた

だそう感じただけのことだ。

もしかすると、こう感じるのはぼくだけかもしれないが、これが正直な気持ちだ。どうか、この激しく狂

おしい非現実な現実を味わって欲しい。およそリアルでない登場人物たちが紡ぎだす灼熱の物語に焦がさ

れて欲しい。よもや、ぼくがこの人のファンになるなんて思いもしなかった。あばずれで、じゃじゃ馬で

自分の思い通りにならないところがとてもいい。読む人を選ぶ本だとは思うが、ぼくは完全にノックアウ

トされてしまった。この人これからも注目していよう。