結構おもしろいじゃないの。この本最後まで読んで「ああ、そうだったのか!」っていうサプライズが
あるのだが、これで救われてるね。だって、密室殺人の謎にしても、ズル剥けの『アカムケ様』の死体
の謎にしても、列車消失の謎にしてもあまり感心しなかったもの。
それでもおもしろかった。話自体がなかなか読ませる。ノンストップ本格推理という宣伝文句もあなが
ち的外れではないと感じた。
おもしろいのは、本書の時間進行と読書の時間とが微妙にリンクしていること。章の冒頭に経過時間が
記されているのだが、それがほぼ合致していた。これは作者のあとがきを読んで知ったのだが、これを
構想の根本において本作を書き上げたそうなのである。だから、すごく苦労したそうな。
霞さん、あなたの試みは少なくともぼくにはぴったんこカンカンでしたよ。ご苦労さまでした。
かのヒッチコックの「バルカン超特急」のように次々と畳み掛けるように事件が起こり、新たな展開が
生まれ、あれよあれよのうちにラストにたどり着いていた。
バカミスとまではいかないが、適度にバカ要素が入っていてよろしい。なんせ、列車を乗っ取った男た
ちの要求が駅構内でのキャンプファイヤーと花いちもんめなんだもの。こういうの普通考える?またそ
れが、物語の中では必然なんだから凄いではないか。
軽くて読み応えという点ではからっきし駄目だけど、息抜きに読むのにはもってこいのミステリだ。
しかし、これが2002年度の「このミス」第4位とは驚いてしまう。これもみなラストのあの思いも
よらないサプライズのせいなんだろうな。