ようやく読んだ。不滅の名作だということだが、ぼくはこれまったく受け付けなかった。なにが合わないって、主人公のガリヴァー・フォイルにぜんぜん共感できなかったのがまず一つ。それとこれはぼくに問題があるのだろうが、復讐の物語というのが基本的に好きじゃないのだ。
だから、本書の元になってるデュマの「モンテ・クリスト伯」も途中で挫折しちゃってるし、このあいだ紹介したジル・マゴーン「騙し絵の檻」も好きじゃないのだ。
ということは、積読本の中に埋もれているジャック・ヴァンスの魔王子シリーズもコケてしまうのだろうか?う~ん、これは由々しき事態ですぞ、奥さん!
デーモン・ナイトが絶賛したという『普通の小説6冊分もの素晴らしいアイディア』というのも、今のSFを少しでも齧った身としては物足りないと言わざるを得ない。
物語の根幹となる《ジョウント効果》のみテレポーテーションを新たな視点で確立したといった意味で新鮮だったが、その他の部分に関してはイマイチだ。
奥歯にスイッチを隠した加速装置などは、すでに「サイボーグ009」で馴染み深かったし、その描かれ方にしても今の仮面ライダーではおなじみだ。もちろん、それら二つの元祖が本書なのは重々承知だが、やはり初めて知るのとすでに知ってるのとでは意味合いが大きく変わってくる。言ってみれば島田荘司の「占星術殺人事件」を読む前に「金田一少年の事件簿」で、そのトリックに接してしまうようなものなのだ。ところで「サイボーグ009」の元ネタはスタージョンの「人間以上」だけなのかと思っていたが、本書からもインスパイアされた作品だったのだ。
それはさておき、本書は物語の進行においても少々頭を傾げてしまう部分があった。ぼくの頭が悪いからか?なんかそう感じてくると訳までがおかしく感じてきてしまう。
というわけで不滅の名作といわれる本書は、まったくダメだったのである。これといいハインライン「夏への扉」といい、どうもこの年代のSFには縁がないようだ。